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August 02, 25
スライド概要
この検証報告書へのご意見をお願いします。
報告書に反映させて、長野市に提出する予定です。
2025.08.08.締め切り
こちらまで↓
https://bit.ly/aokijimagorm
青木島遊園地廃止検証市民委員会
第6章 市長の責任-なぜ止めてくれ
なかったのか
実は、「一軒の苦情」から始まった青木島遊園地廃止ではありませ
ん。荻原健司市長の机に、レクチャー資料が置かれた2022 年 8 月
25 日。騒動の3ヶ月前が、本当の始まりです。
ある意味、皆が被害者。この状況を終わらせる必要がある。
長野市職員から、レクチャーを受ける市長は、その不思議な一文の
意味を、どのように考えたでしょうか。
市長は、子どもたちの成長の場を奪う結論を拒否し、対話による解
決を部下に命じる権限を、持っていたはずです。市民が、彼を信じ、
選挙で彼にその力を与えたからです。しかし、市長は、公園廃止を、
ただ認めました。
この章では、長野市の未来を決定的に変えられる瞬間に、そうしな
いと荻原健司市長に決めさせた内部文書から説き起こし、市長のリ
ーダーシップが適切に果たされたかについて、検証します。
市長はなぜ、子どもたちと市民の思いに応えようと、考えなかった
のでしょうか。
(編集者注 この項個人の主観であり、
市は妥当性を検証していません)
(編集者注 市は青木島遊園地が「特殊な立地」であることを強調
していますが、客観的検証は一切行われていません)
2022.8.25 市長レク資料
その内容は、コンプライアンス違反容認を市長に迫る
という、行政文書としては異質なものでした。
6.1. コンプラ違反の市長決定‐異形の公文書
「信じられない」と、本委員会の行政経験者は、口を揃えます。公
文書を見慣れた人なら、これが本当に長野市長への説明レクチャー
用に作られた、本物の公文書だと聴いても、すぐには信じられないか
もしれません。青木島遊園地廃止についての市長レク資料は、それほ
ど、公務員の標準的な価値観から外れているのです。
資料の感情表現が豊かです。遊園地を巡る苦情元世帯の主観を、生
き生きとした筆致で市長に伝えようとしています。
騒音に苦しんできた。
誰も謝ってくれない。
遊園地の廃止には大賛成。
そもそも、市長レクで特定一世帯からの苦情を妥当性の検証もな
しに紹介すること自体が、異例といえるでしょう。市が「騒音」を、
数値として客観的に把握していないのは、前の章で述べたとおりで
す。資料は、一世帯の主観を偏重した結果、「 苦情により遊園地が利
用できない状態であること」を、「廃止の決定要因」の一つとして堂々
と掲げています。
一方で、利用者であるこどもたちをはじめとした市民からの意見
は、全く触れられていません。遊園地に公共性など認めていないよう
な態度です。
全ての市職員は、任用されるときに宣誓書に署名しており、その中
には次の一節があります。
全体の奉仕者として誠実かつ公正に職務を執行することを固く
誓います。
これは憲法の「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉
仕者ではない」から採られた文です。資料は、一部の奉仕者として作
成されてはいないでしょうか。宣誓を忘れてしまったのでしょうか。
市は、顧問弁護士に苦情への対応方針を照会し、次の回答を得たこ
とが資料に記載されています。
法的には、遊園地を通常の利用の仕方で遊ぶこと、また、その
騒音が周囲に与える影響については、受忍(我慢)できる範囲
とされているため、普通に遊んでいい
市は、「子どもたちが公園で遊ぶことに法的問題はない」という専
門家のお墨付きを得たのです。しかし市は「そもそも通常の利用では
ない」との苦情元世帯の主張を強調し、苦情元世帯からの「叱責や注
意が子どもに与える影響を考えると、今の状況では児童センターの
児童は遊園地を利用できない」と、弁護士の見解と逆方向に進みまし
た。市は、法の秩序の下で苦情元世帯と向き合い、子どもたちの権利
を護らなければいけないのに、現状維持を選んでしまいました。法律
を全ての職務の規範とすべき公務員にとって、考えられないコンプ
ライアンス違反が、市長レク資料に堂々と記載されています。
憲法理念を忘れ、一部の奉仕者と成り果て、法律の外で仕事を片付
けようとする市職員を映し出している資料に、市行政を率いるリー
ダーとして、本来であれば市長は衝撃を受けなければなりませんで
した。この資料が、公園緑地課長、都市整備部長、そして副市長とい
う複数のチェックを経ても問題視されずに市長に示された事実は、
市の統制機構の劣化を示しています。行政組織がコンプライアンス
違反を市長に迫るという、ある意味で、公園廃止よりも根深い病巣が、
市長レク資料には現れています。市長は職員の仕事の指揮監督者と
して、これを正さなければならないのに、率先してこれを認めてしま
いました。市長は、止められた、というよりは止めなければならなか
った遊園地廃止によって、取り返しのつかない不利益を青木島の子
どもたちと長野市民にもたらしました。コンプライアンス違反を容
認した市長の行政責任は、極めて重いと、本委員会は結論付けます。
6.2 市民の損失4億7千万円
青木島遊園地廃止で、赤っ恥をかかされたと思う市民は少なくあ
りません。一軒の苦情にさえ対応を誤り、遊園地一つ守れないとは。
子どもを泣かせて解決策とは。広く報道され、社会問題にまで発展し、
市民は全国民に面目が立たない思いです。
「こどもを大事にしない自治体」という印象は、少子化と人口減少
が進む中、今後の長野市に決して良い影響は与えないでしょう。
本委員会が、報道量を広告費に換算する一般的な手法を用いて試
算したところ、そのマイナスの経済効果は、少なくとも4億7千万
円以上に上ります。
青木島遊園地廃止による負の経済効果試算
※ティア1 朝日新聞デジタル等の全国紙・通信社等
ティア 2 Yahoo! ニュース等の有力オンラインポータ
ル・ビジネス誌
ティア3 信濃毎日新聞等のその他地方メディア等
SNS この件に言及したひろゆき氏や茂木健一郎氏等の
有名インフルエンサーとその拡散効果
国際メディア ガーディアン等の外国語メディア
遊園地廃止報道は、事案発覚当初、連日メディアがトップ級の扱い
で報道しました。その間の報道を集計し、仮にそれらを広告として流
すとした場合の費用を試算したのが、この表です。4億7千万円もの
広告宣伝費をつぎ込む勢いで、長野市の評判が爆発的に損なわれて
いったことになります。
実はこの見積もりは、控えめな金額です。ティア 3 以外は、発覚
した2022 年から2023年3月までの期間に限って集計しています。
SNS 増幅効果には、一般的な利用者による情報発信は、含まれてい
ません。
この4億7千万円の負の広告効果を打ち消すには、同等以上の費
用をかけた積極的な広報活動が必要となるでしょう。しかし、その費
用を、一体誰が負担するのでしょうか。市が有効な回復策を講じない
限り、この4億7千万円相当のイメージダウンという「見えない負
債」は、今後も長野市の価値を蝕み続けることになります。
荻原健司氏は市長として、あまりに大きな市のイメージダウンを
引き起こした公園廃止について、その責任を問われる必要がありま
す。
一例としてあげれば、佐倉市では、新型コロナウイルスに関する国
の交付金の事務処理を誤り、結果として市に約4億2,500万円の損
失が発生した事案で、市長は10ヶ月間、給料月額10%減額との処分
を自らに課しています。
青木島遊園地につ
いてネガティブな
報道の事例
(ティア1)
6.3 市長の条例違反
都市公園をはじめとする緑とオープンスペースは、都市環境の
改善等に寄与しています。
これは、国土交通省公式サイトの一節です。1,400㎡級の青木島遊
園地は、公都市園と同様に、地域の環境改善に役立っていました。そ
の廃止は、地域の環境悪化に直結します。
「緑を豊かにする条例」(緑化条例)は、市長の責務を定めています。
第3条 市長は、この条例の目的を達成するため、緑を豊かに
する計画を策定し、これを実施しなければならない。
この責務に基づき、市は「緑を豊かにする計画」(緑化計画)を定め
ており、更北・青木島地域についても、明確な方針が示されています。
1. 公園不足の現状認識: 図「都市公園等の配置と、身近な公園等
の誘致圏」では、青木島遊園地周辺は「都市公園がない分、遊園
地が多く整備されているエリア」に位置付けられています。中で
も青木島遊園地は、1400㎡級の緑地として、都市公園を補完す
る極めて重要な緑の拠点でした。
2. 遊園地機能の維持: さらに地域別計画「川中島・更北地域」の緑
化方針図には、核心的な文言が次のように明記されています。
都市公園を補完する遊園地の機能の維持を図るとともに既存の
都市公園の質を高めます
荻原健司市長が下した廃止決定は、緑化計画と正反対であり、これ
は条例第3条の市長の計画策定・実施義務に明白に違反しています。
市長の責務を放棄し、こどもと市民から貴重な緑の空間を奪って地
域環境を悪化させた責任は、極めて重いと本委員会は指摘します。
長野市緑を豊かにする計画(平成31年) 地域別計画川中島・更北地域
から引用して青木島遊園地廃止検証市民委員会が作成
6.4 公約の真逆
公約とは、選挙で市民から信託を受けた公人が、その任期中に最大
限の実現を図るべき最も重い約束です。荻原健司市長自身が市民と
交わした約束は、青木島遊園地の廃止という判断において、果たして
守られたのでしょうか。市長の公約を引用しながら、検証します。
放課後子ども総合プランの環境整備を図ります。子どもたちの
健やかな成長を支援するため、学習と運動のバランスのとれた
カリキュラムを提供します。
市長の選挙公約には、子どもや子育て支援に関する言葉が散りば
められています。
特に「放課後子ども総合プランの環境整備」は、児童センターと一
体的に機能していた遊園地の役割そのものであり、維持・拡充するの
なら分かりますが、廃止はあり得ません。むしろ環境悪化です。
遊園地廃止は「学習と運動のバランスのとれたカリキュラム」の提
供という後段にも矛盾していて、子どもたちの健やかな成長の機会
を奪うものです。
「子どもを大切にするまち長野」を総合的に構築することは移
住の決め手となります。(略) 人口増対策として展開します。
「子どもを大切にするまち」をアピールし、人口を呼び込むという
戦略自体は理解できます。しかし、市民が目の当たりにしたのは、そ
の公約とは真逆の現実でした。荻原市政が実際に行ったのは、一部の
苦情を優先し、子どもたちの遊び場を廃止するという失政です。その
結果、全国に広まってしまったのは「子どもを大切にしないまち長野」
という、極めて不名誉な烙印(らくいん)でした。将来に渡り市の人
口の推移に影響が残ることを、市民は懸念しています。
公約を実現することが難しい場合はあるかもしれません。しかし、
自ら掲げた公約と真逆の政策を実行し、市の未来に負の影響を与え
た市長が、果たして過去の長野市にいたでしょうか。この一点をもっ
てしても、荻原健司市長のリーダーとしての資質は、市民から厳しく
問われていると、本委員会は断じます。
今回の事案が市民の心に残した傷は、遊園地の喪失だけではないか
もしれません。今後、市長がどのような政策やビジョンを語ったとし
ても、多くの市民の心には常に一つの問いが浮かぶことになるでし
ょう。
「その約束は、本当に守られるのですか」と。
一度失われた信頼を取り戻すことが、いかに困難であるか。市長
はこの現実を重く受け止めるべきです。
荻原健司氏「後援会討論資料」(2021年)から抜粋
こども・子育て支援を強調する内容は、単なる選挙対策だったの
でしょうか…
6.5 偽りの希望-住民説明会
長野市が、一軒の苦情に迎合したと見られる青木島遊園地の廃止。
発覚当初の混乱と並んで世論の注目が集中したのが、2023年2月11
日、荻原健司市長が自らマイクを握った、住民説明会です。
単なる廃止ありきの説明会ではないということは繰り返し申し
上げたい。
私の責任において判断をする時期は必ず来ますし、皆さんのご
意見をより尊重した判断にしていきたい。
住民からの行政不信と遊園地存続への期待が同時にピークを迎え
交錯する中、市長は説明会の最後で「まとめ」として、これらの見解
を表明しました。説明会に参加した市民としては、市長の権限と言葉
にすがるような思いで聞いたことでしょう。説明会後、報道に対して
市長は、遊園地存廃を再検討する旨を明言し(2023.02.14.長野市民新
聞ほか)、市民の希望は一層高まります。
しかし翌3月1日、期待を煽るだけあおった挙句に市長は、廃止
をあっけなく再表明します。それは遊園地から5km離れた長野市議
会において、議員の質問に答える形でした。青木島の住民たちへの廃
止説明は、現在に至るまで一切、行われていません。
廃止再決定の理由として、市長は、市が借地している遊園地の地権
者が、既に新たな土地利用を計画し進めていることをあげました。市
長のやり口について、「(地権者への)責任のなすり付け」、「だまされた
という思い」、「(説明会は)声を聞いたというアリバイづくり」
(2023.03.02.信濃毎日新聞)と市民の不信が噴出します。
この私も今市内で4人の子供も育てています。(略) 目指す方
向性、気持ちとしては同じものを共有させていただいている。
説明会での市長の言葉に、青木島に住む本委員会委員は、「役人が
用意した原稿ではなく、住民世論を受けとめた市長の責任ある言葉
であり、子育てをしていて気持ちは住民と同じとまで言及している。
再び廃止の結論に手のひらをかえすのは、住民感情をもてあそぶも
のだ」と政治倫理上の問題を強く訴えています。
市は後に、説明会の前月から既に地権者と遊園地再開を交渉して
いたと明らかにしています。当然、市長は説明会の時点で、遊園地再
開が困難だと認識していました。その事実を伏せた一連の言動は、説
明不足では済まされず、市の信頼をさらに失墜させるものであり、市
長の政治倫理上の責任は極めて重大であると、本委員会は断じます。
市長さんはどうして大人の人の話しか聞かないんですか? 遊
園地で遊んではいけないんですか?
市長さんへ。私はあの公園で遊んでないので遊ばせてくださ
い。
この説明会で、聞く人からの拍手が最も大きかったのは、これら女
児 2 人からの無垢な問いかけです。子どもたちの勇気に対し、市長
は「反省しなければいけない」等のありきたりな言葉を返すことに終
始しました。本委員会は、市長の次の回答を、特に問題視しています。
「当然まだ遊園地ありますので訪問してみて、また感想聞かせ
ていただきたいなっていう風に思います。」
軽薄な言葉です。女児は「もうすぐ無くなる公園で遊べて嬉しかっ
た」とでも、市長に言えばよいのでしょうか。今後もずっと遊べるよ
うにしてくださいと言いたかったのは、市長も理解できたはずです。
市長の言葉は、かえってこどもを悲しませ、傷つけています。
切実な子どもの訴えを事務的な「案件」としてしか扱えないのであ
れば、市長の政治倫理とリーダーとしての資質は、根本から問われな
ければなりません。
本委員会委員が青木島遊園地廃止住民説明会場で記録したメモの浄書
本委員会は別途録音記録も外部から提供を受け、両方を照合しながら検証しました。
◆徹夜必至につき閲覧注意の「〇見え通信」https://linktr.ee/koizumikazuma◆長野市議4期◆自称スーパー無所属◆情報公開徹底◆市民第一主義◆主著「長野県庁の『不都合な真実』」は平安堂ランク最高2位◆元長野県庁職員◆大北森林組合事件で住民監査請求成功◆一軒の苦情で!? 青木島遊園地廃止に大反対◆URLまとめhttps://bit.ly/m/kazuma◆以前使っていた資料公開サイトhttps://www.slideshare.net/kazumakoizumi1/documents
第 6 章 市長の責任 -なぜ止められなかったのか
内容 第 6 章 市長の責任-なぜ止められなかったのか ........................ 4 6.1. コンプラ違反の市長決定‐異形の公文書 .......................... 7 6.2 市民の損失 4 億 7 千万円 ................................................... 9 6.3 市長の条例違反 .............................................................. 12 6.4 公約の真逆 ....................................................................... 14 6.5 偽りの希望-住民説明会 ................................................. 16
第 6 章 市長の責任-なぜ止められな かったのか 実は、 「一軒の苦情」から始まった青木島遊園地廃止ではありませ ん。荻原健司市長の机に、レクチャー資料が置かれた 2022 年 8 月 25 日。騒動の 3 ヶ月前が、本当の始まりです。 ある意味、皆が被害者。この状況を終わらせる必要がある。 長野市職員から、レクチャーを受ける市長は、その不思議な一文の 意味を、どのように考えたでしょうか。 そのとき市長は、事情を知らされずに翻弄されることになる地域 住民の気持ちは、考えたでしょうか。 部下たちが、地域の隠れた対立を解決する努力を怠ったとは、考え たでしょうか。 本当の、最大の被害者であり、何の落ち度もないのに遊び場を奪わ れ、権利の侵害に声も上げられないような、弱く小さな存在のことは、 考えたでしょうか。 ただ、部下が言うことを追認はしました。それが市長の職務だとは、 考えたのかもしれません。 市長は、子どもたちの成長の場を奪う結論を拒否し、対話による解 決を部下に命じる権限を、持っていたはずです。市民が、彼を信じ、 選挙で彼にその力を与えたからです。しかし、市長は、公園廃止を、 ただ認めました。 この章では、長野市の未来を決定的に変えられる瞬間に、そうしな いと荻原健司市長に決めさせた内部文書から説き起こし、市長のリ ーダーシップが適切に果たされたかについて、検証します。 市長はなぜ、子どもたちと市民の思いに応えようと、考えなかった のでしょうか。
(編集者注 この項個人の主観であり、 市は妥当性を検証していません)
(編集者注 市は青木島遊園地が「特殊な立地」であることを強調 していますが、客観的検証は一切行われていません) 2022.8.25 市長レク資料 その内容は、コンプライアンス違反容認を市長に迫る という、行政文書としては異質なものでした。
6.1. コンプラ違反の市長決定‐異形の公文書 「信じられない」と、本委員会の行政経験者は、口を揃えます。公 文書を見慣れた人なら、これが本当に長野市長への説明レクチャー 用に作られた、本物の公文書だと聴いても、すぐには信じられないか もしれません。青木島遊園地廃止についての市長レク資料は、それほ ど、公務員の標準的な価値観から外れているのです。 資料の感情表現が豊かです。遊園地を巡る苦情元世帯の主観を、生 き生きとした筆致で市長に伝えようとしています。 騒音に苦しんできた。 誰も謝ってくれない。 遊園地の廃止には大賛成。 そもそも、市長レクで特定一世帯からの苦情を妥当性の検証もな しに紹介すること自体が、異例といえるでしょう。市が「騒音」を、 数値として客観的に把握していないのは、前の章で述べたとおりで す。資料は、一世帯の主観を偏重した結果、 「苦情により遊園地が利 用できない状態であること」を、 「廃止の決定要因」の一つとして堂々 と掲げています。 一方で、利用者であるこどもたちをはじめとした市民からの意見 は、全く触れられていません―区長会からの意見はありますが。遊園 地に公共性など認めていないような態度です。 全ての市職員は、任用されるときに宣誓書に署名しており、その中 には次の一節があります。 全体の奉仕者として誠実かつ公正に職務を執行することを固く 誓います。 これは憲法の「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉
仕者ではない」から採られた文です。資料は、一部の奉仕者として作 成されてはいないでしょうか。宣誓を忘れてしまったのでしょうか。 市は、顧問弁護士に苦情への対応方針を照会し、次の回答を得たこ とが資料に記載されています。 法的には、遊園地を通常の利用の仕方で遊ぶこと、また、その 騒音が周囲に与える影響については、受忍(我慢)できる範囲 とされているため、普通に遊んでいい 市は、 「子どもたちが公園で遊ぶことに法的問題はない」という専 門家のお墨付きを得たのです。しかし市は「そもそも通常の利用では ない」との苦情元世帯の主張を強調し、苦情元世帯からの「叱責や注 意が子どもに与える影響を考えると、今の状況では児童センターの 児童は遊園地を利用できない」と、弁護士の見解と逆方向に進みまし た。市は、法の秩序の下で苦情元世帯と向き合い、子どもたちの権利 を護らなければいけないのに、現状維持を選んでしまいました。法律 を全ての職務の規範とすべき公務員にとって、考えられないコンプ ライアンス違反が、市長レク資料に堂々と記載されています。 憲法理念を忘れ、一部の奉仕者と成り果て、法律の外で仕事を片付 けようとする市職員を映し出している資料に、市行政を率いるリー ダーとして、本来であれば市長は衝撃を受けなければなりませんで した。この資料が、公園緑地課長、都市整備部長、そして副市長とい う複数のチェックを経ても問題視されずに市長に示された事実は、 市の統制機構の劣化を示しています。行政組織がコンプライアンス 違反を市長に迫るという、ある意味で、公園廃止よりも根深い病巣が、 市長レク資料には現れています。市長は職員の仕事の指揮監督者と して、これを正さなければならないのに、率先してこれを認めてしま いました。市長は、止められた、というよりは止めなければならなか った遊園地廃止によって、取り返しのつかない不利益を青木島の子 どもたちと長野市民にもたらしました。コンプライアンス違反を容 認した市長の行政責任は、極めて重いと、本委員会は結論付けます。
6.2 市民の損失 4 億 7 千万円 青木島遊園地廃止で、赤っ恥をかかされたと思う市民は少なくあ りません。一軒の苦情にさえ対応を誤り、遊園地一つ守れないとは。 子どもを泣かせて解決策とは。広く報道され、社会問題にまで発展し、 市民は全国民に面目が立たない思いです。 「こどもを大事にしない自治体」という印象は、少子化と人口減少 が進む中、今後の長野市に決して良い影響は与えないでしょう。 本委員会が、報道量を広告費に換算する一般的な手法を用いて試 算したところ、そのマイナスの経済効果は、少なくとも 4 億 7 千万 円以上に上ります。 青木島遊園地廃止による負の経済効果試算 ※ティア1 朝日新聞デジタル等の全国紙・通信社等 ティア 2 Yahoo! ニュース等の有力オンラインポータ ル・ビジネス誌 ティア 3 信濃毎日新聞等のその他地方メディア等 SNS この件に言及したひろゆき氏や茂木健一郎氏等の 有名インフルエンサーとその拡散効果 国際メディア ガーディアン等の外国語メディア
遊園地廃止報道は、事案発覚当初、連日メディアがトップ級の扱い で報道しました。その間の報道を集計し、仮にそれらを広告として流 すとした場合の費用を試算したのが、この表です。4 億 7 千万円もの 広告宣伝費をつぎ込む勢いで、長野市の評判が爆発的に損なわれて いったことになります。 実はこの見積もりは、控えめな金額です。ティア 3 以外は、発覚 した 2022 年から 2023 年 3 月までの期間に限って集計しています。 SNS 増幅効果には、一般的な利用者による情報発信は、含まれてい ません。 この 4 億 7 千万円の負の広告効果を打ち消すには、同等以上の費 用をかけた積極的な広報活動が必要となるでしょう。しかし、その費 用を、一体誰が負担するのでしょうか。市が有効な回復策を講じない 限り、この 4 億 7 千万円相当のイメージダウンという「見えない負 債」は、今後も長野市の価値を蝕み続けることになります。 荻原健司氏は市長として、あまりに大きな市のイメージダウンを 引き起こした公園廃止について、その責任を問われる必要がありま す。 一例としてあげれば、佐倉市では、新型コロナウイルスに関する国 の交付金の事務処理を誤り、結果として市に約 4 億 2,500 万円の損 失が発生した事案で、市長は 10 ヶ月間、給料月額 10%減額との処分 を自らに課しています。
青木島遊園地につ いてネガティブな 報道の事例 (ティア 1)
6.3 市長の条例違反 都市公園をはじめとする緑とオープンスペースは、都市環境の 改善等に寄与しています。 これは、国土交通省公式サイトの一節です。1,400 ㎡級の青木島遊 園地は、公都市園と同様に、地域の環境改善に役立っていました。そ の廃止は、地域の環境悪化に直結します。 「緑を豊かにする条例」(緑化条例)は、市長の責務を定めています。 第3条 市長は、この条例の目的を達成するため、緑を豊かに する計画を策定し、これを実施しなければならない。 この責務に基づき、市は「緑を豊かにする計画」(緑化計画)を定め ており、更北・青木島地域についても、明確な方針が示されています。 1. 公園不足の現状認識: 図「都市公園等の配置と、身近な公園等 の誘致圏」では、青木島遊園地周辺は「都市公園がない分、遊 園地が多く整備されているエリア」に位置付けられています。 中でも青木島遊園地は、1400 ㎡級の緑地として、都市公園を補 完する極めて重要な緑の拠点でした。 2. 遊園地機能の維持: さらに地域別計画「川中島・更北地域」の 緑化方針図には、核心的な文言が次のように明記されています。 都市公園を補完する遊園地の機能の維持を図るとともに既存の 都市公園の質を高めます 荻原健司市長が下した廃止決定は、緑化計画と正反対であり、これ は条例第 3 条の市長の計画策定・実施義務に明白に違反しています。 市長の責務を放棄し、こどもと市民から貴重な緑の空間を奪って地 域環境を悪化させた責任は、極めて重いと本委員会は指摘します。
長野市緑を豊かにする計画(平成 31 年) 地域別計画川中島・更北地域 から引用して青木島遊園地廃止検証市民委員会が作成
6.4 公約の真逆 公約とは、選挙で市民から信託を受けた公人が、その任期中に最大 限の実現を図るべき最も重い約束です。荻原健司市長自身が市民と 交わした約束は、青木島遊園地の廃止という判断において、果たして 守られたのでしょうか。市長の公約を引用しながら、検証します。 放課後子ども総合プランの環境整備を図ります。子どもたちの 健やかな成長を支援するため、学習と運動のバランスのとれた カリキュラムを提供します。 市長の選挙公約には、子どもや子育て支援に関する言葉が散りば められています。 特に「放課後子ども総合プランの環境整備」は、児童センターと一 体的に機能していた遊園地の役割そのものであり、維持・拡充するの なら分かりますが、廃止はあり得ません。むしろ環境悪化です。 遊園地廃止は「学習と運動のバランスのとれたカリキュラム」の提 供という後段にも矛盾していて、子どもたちの健やかな成長の機会 を奪うものです。 「子どもを大切にするまち長野」を総合的に構築することは移 住の決め手となります。(略) 人口増対策として展開します。 「子どもを大切にするまち」をアピールし、人口を呼び込むという 戦略自体は理解できます。しかし、市民が目の当たりにしたのは、そ の公約とは真逆の現実でした。荻原市政が実際に行ったのは、一部の 苦情を優先し、子どもたちの遊び場を廃止するという失政です。その 結果、全国に広まってしまったのは「子どもを大切にしないまち長野」 という、極めて不名誉な烙印(らくいん)でした。将来に渡り市の人 口の推移に影響が残ることを、市民は懸念しています。 公約を実現することが難しい場合はあるかもしれません。しかし、 自ら掲げた公約と真逆の政策を実行し、市の未来に負の影響を与え
た市長が、果たして過去の長野市にいたでしょうか。この一点をもっ てしても、荻原健司市長のリーダーとしての資質は、市民から厳しく 問われていると、本委員会は断じます。 今回の事案が市民の心に残した傷は、遊園地の喪失だけではないか もしれません。今後、市長がどのような政策やビジョンを語ったとし ても、多くの市民の心には常に一つの問いが浮かぶことになるでし ょう。 「その約束は、本当に守られるのですか」と。 一度失われた信頼を取り戻すことが、いかに困難であるか。市長 はこの現実を重く受け止めるべきです。 荻原健司氏「後援会討論資料」(2021 年)から抜粋 こども・子育て支援を強調する内容は、単なる選挙対策だったの でしょうか…
6.5 偽りの希望-住民説明会 長野市が、一軒の苦情に迎合したと見られる青木島遊園地の廃止。 発覚当初の混乱と並んで世論の注目が集中したのが、2023 年 2 月 11 日、荻原健司市長が自らマイクを握った、住民説明会です。 単なる廃止ありきの説明会ではないということは繰り返し申し 上げたい。 私の責任において判断をする時期は必ず来ますし、皆さんのご 意見をより尊重した判断にしていきたい。 住民からの行政不信と遊園地存続への期待が同時にピークを迎え 交錯する中、市長は説明会の最後で「まとめ」として、これらの見解 を表明しました。説明会に参加した市民としては、市長の権限と言葉 にすがるような思いで聞いたことでしょう。説明会後、報道に対して 市長は、遊園地存廃を再検討する旨を明言し(2023.02.14.長野市民新 聞ほか)、市民の希望は一層高まります。 しかし翌 3 月 1 日、期待を煽るだけあおった挙句に市長は、廃止 をあっけなく再表明します。それは遊園地から 5km 離れた長野市議 会において、議員の質問に答える形でした。青木島の住民たちへの廃 止説明は、現在に至るまで一切、行われていません。 廃止再決定の理由として、市長は、市が借地している遊園地の地権 者が、既に新たな土地利用を計画し進めていることをあげました。市 長のやり口について、 「(地権者への)責任のなすり付け」 、 「だまされ たという思い」、「(説明会は)声を聞いたというアリバイづくり」 (2023.03.02.信濃毎日新聞)と市民の不信が噴出します。 この私も今市内で 4 人の子供も育てています。(略) 目指す方 向性、気持ちとしては同じものを共有させていただいている。 説明会での市長の言葉に、青木島に住む本委員会委員は、 「役人が
用意した原稿ではなく、住民世論を受けとめた市長の責任ある言葉 であり、子育てをしていて気持ちは住民と同じとまで言及している。 再び廃止の結論に手のひらをかえすのは、住民感情をもてあそぶも のだ」と政治倫理上の問題を強く訴えています。 市は後に、説明会の前月から既に地権者と遊園地再開を交渉して いたと明らかにしています。当然、市長は説明会の時点で、遊園地再 開が困難だと認識していました。その事実を伏せた一連の言動は、説 明不足では済まされず、市の信頼をさらに失墜させるものであり、市 長の政治倫理上の責任は極めて重大であると、本委員会は断じます。 市長さんはどうして大人の人の話しか聞かないんですか? 遊 園地で遊んではいけないんですか? 市長さんへ。私はあの公園で遊んでないので遊ばせてくださ い。 この説明会で、聞く人からの拍手が最も大きかったのは、これら女 児 2 人からの無垢な問いかけです。子どもたちの勇気に対し、市長 は「反省しなければいけない」等のありきたりな言葉を返すことに終 始しました。本委員会は、市長の次の回答を、特に問題視しています。 「当然まだ遊園地ありますので訪問してみて、また感想聞かせ ていただきたいなっていう風に思います。 」 軽薄な言葉です。女児は「もうすぐ無くなる公園で遊べて嬉しかっ た」とでも、市長に言えばよいのでしょうか。今後もずっと遊べるよ うにしてくださいと言いたかったのは、市長も理解できたはずです。 市長の言葉は、かえってこどもを悲しませ、傷つけています。 切実な子どもの訴えを事務的な「案件」としてしか扱えないのであ れば、市長の政治倫理とリーダーとしての資質は、根本から問われな ければなりません。
本委員会委員が青木島遊園地廃止住民説明会場で記録したメモの浄書 本委員会は別途録音記録も外部から提供を受け、両方を照合しながら検証しました。